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さぁ、行こう!優風と共に。幼き頃から憧れた外の世界へ。未知の世界へ。夢と希望で心を膨らませて…
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「あれ?リア、来てたんだ。アランは今いないぜ。」
旅団『Tughril esprit』、通称【鷹の森】の本部屋敷。
アラン兄様が所属し、私の所属旅団の親旅団でもある。
ここのリビングでのんびりしていると、団長のレグルスが声をかけてきた。
「えぇ、知ってる。ティアと買い物よね」
仲良いよな、あの二人はさ。と、彼は私の返事に答え、目の前にアイスティを置く。
お礼を言うとにっこりと笑顔を返してくる。
リビングの南側からは開け放たれたテラスから心地いい風が入ってきた。
「風もそろそろ秋っぽくなってきたなぁ」
私も軽く頷くと、ため息混じりに呟いた
「秋…かぁ」
そんな私にレグルスは、にっと笑って言葉を続ける
「リアには珍しくブルーになってるのな?」
「私だってブルーな気分のときもあるわよ」
むすっとしてそういうと、そう拗ねるなって。と、爽やか笑顔。
だから思わず…こいつ、私をからかって楽しんでる…と思ってしまう
「好きな人が出来た…とか?」
そういった彼に、それはありえないわ。と笑って返事をした。
「でもね…」
ぽつんと呟いた声に、彼は私の顔を見た。
「でも、そういうのに近い気持ちは…昔持ったことあったかも、ね…」
その話、聞いてみたいな。と言うレグルスに、私はゆっくりと話し始めた…

 



あれはいつ頃の記憶だろう…
そう思えるほどの昔の記憶なのか、それとも振り返られる程度の頃の記憶なのか
私の中では曖昧だ。
でも確かに覚えているのは、その手の温もりと不器用な笑顔
そしていろんなことを知った優しい思い出だった・・・


「うっく…えっ…ぐすっ…」
泣きながらどのくらい歩いたのか分からない。
ただ分かるのは、ここが自分の知らない森の中だということだけ…
泣いている原因…それは凄く簡単なこと。
兄様があまりにもティアを庇うから…たぶん、寂しかったのだろう。
「兄様の…ばかぁ…」
行き場のない寂しさと知らない場所にいる心細さ、それに薄暗くなってきて怖さがだんだんと
増していく。
「え~ん、怖いよぉ…」
そう泣きながら、木陰に座ろうとすると、ぐっと上に引き上げられた。
見上げるとそれは一匹のディアホーンだった…
「ひっ…」
しまったと思ったときは足は地についてなく、もうだめだと目を閉じた瞬間…風を切る音と
一言の罵声。
「諦めんなっ、ばか!」
そして目を開けると私を抱えた、見覚えのない少年のエルフがいた。

「う…ふぇ…」
安心して涙が溢れ出す。そんな私を呆れたように彼はため息をついた。
「お前、どこから来た?夜に一人で歩いてる奴はバルバに食ってくれって言ってるようなもんだぜ?まったく…」
そういいながら、持っていた干し肉を半分にちぎる。
「ほら、何も食ってないだろう?その様子だとさ」
首を振って断ろうとした瞬間、ぐぅ~っと盛大にお腹がなった。
私は真っ赤になって、彼は私の手に干し肉を持たせた。
「食べておけよ、味は…まぁ、あんまり自信ないけどな」
「ありがとう…」
味は確かにしょっぱいだけで…でも、家で食べるどんなに美味しい料理より優しい味がした。

とにかく夜に歩くのは物騒だ。ということで彼の家に行くことになった。
名前はなんと言ったか…今は忘れてしまったけれどぶっきら棒な優しさは覚えている
「へぇ、リアノンっていうのか」
「うん…リアでいい。みんな、そう呼んでるから」
彼は頷くと、頭をぽんぽんと優しく叩いた。
「ほら、もう少しだからしっかりな?泣き虫リア。」
そう言うと、ふっと笑う。その笑い方がなんだか兄様と似ていて…つい拗ねてしまった
「泣き虫じゃないもん!真っ暗なんか怖くないんだからっ!剣だって使えるんだからねっ」
そして一人でずんずん歩く。
慌てて追いかけてきた彼が呆れて、でも少し優しく微笑んで私の隣をゆっくりと歩いた。
私の歩調に合わせて・・・
彼の家は質素だったが暖かな雰囲気だった。
家族は皆、私を歓迎してもてなしてくれて・・・私にも笑顔がすっかり戻っていた。
自分の両親ももちろん優しくて素敵なのは分かっているし、尊敬もしている。
でも、彼の親はほんとに…ほんとに優しく抱きしめてくれた。
「どの身分でもね、子供を心配しない親はいないんだよ?リアちゃんのご両親や兄さんだってそうだからね」
「でも兄様には大事な人、いるもん…」
彼の母親はそっと私の髪を撫でながら言った。
「リアちゃんも大事なんだよ?たった一人の妹なんだからさ」
いなくていい子なんていないんだよ、皆大切なんだ。命はそういうものだよ・・・
私は気がつくと、彼女の胸の中で大声で泣いていた。
次の日、お弁当を作って貰い、彼と一緒に家路に着いた。
あのさ。と、彼が話しかけるからふりむくと
「リアってさ…可愛いと、俺、思うよ」
「え?」
彼は、にっと微笑むと…そっと包むように私の手を握った。
「これで心細くないだろ?家に着くまでさ」
「うん!ありがとう」
私もそんな彼の手をぎゅっと、やさしく力いっぱい握ったのだった。

そして、歩くこと半日。ようやく私の住む村の門が見えてきた。
「さてっと、もうここまで来れば大丈夫だよな?」
「・・・」
私の様子に、名前を呼んで首をかしげる彼…
そして暫くするとバタバタと誰かが走ってくる音がした。
「リアお嬢様!」
「あぁ、やっぱりお嬢様だ。どこへ行っていらしたんですか、心配しましたよ?」
顔を上げると屋敷で働いているメイドの心配そうな顔
「おや?こちらの方は?」
一人がそういって彼を見る。
俺はこいつを届けに来たんだ。と彼女達にいい、
「じゃぁ、またな!どこかであったら声かけてなっ…泣き虫リア!」
そういって木の枝の道を風のように走っていった。
「ありがとう!・・・でも泣き虫じゃないもん!」
彼の過ぎ去った後に、そう大声で叫んだ・・・


「・・・っていう話ね?何だか懐かしいな」
話し終えた私は、レグルスにふっと微笑む。
「へぇ、泣き虫だったんだ。今からだと想像できないよな」
「…よく言われるわ」
アイスティを飲みながらそういう私に、レグルスはふっと笑う…
「その人に、もう一度会えるといいよな。」
その口調があまりにも優しくて…私も少し顔がほころぶ。
「そうね…彼がハイエルフだったのなら会える確率が高いと思うけど…」
ダークエルフやハーフエルフだったのなら…生き延びていたらになるだろう。
会いたいと思う気持ちがなぜか大きくなる。
会って、こんなに立派になったのよって・・・今の自分を見せたい。
もう泣き虫じゃないわ。と…
くすくすと笑う私をちょっと訝しげに見ているレグルスをよそに、ぬるくなったアイスティを飲み干して思い切り背伸びをした。

(いつか…いつかまた、彼方に会えますように…)

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性別:
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自己紹介:
ここはネットゲームTW3『エンドブレイカー!』に住んでいるリアノン=ゲイルの部屋です。
『エンドブレイカー!』をご存じない方はご遠慮ください。
なお、ここで使われているイラストは、株式会社トミーウォーカーの運営する『エンドブレイカー!』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権は『リアノン』に、著作権は各絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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